途中にある石の形のリンク(「この局面を開く」「投球の前」「投球のあと」)は、五輪や日本選手権の実際の局面を CurlFlux で開きます。開いた場面から、自分で石を投げて試せます。
| 知りたいこと | 読むところ |
|---|---|
| とにかく観戦できるようになりたい | 1. まずはここだけ |
| 中継を見ていて気になったこと(何を叫んでいる? もぐもぐタイムって?) | 1-8. テレビで見ていて気になること |
| ルールの細かいところ | 2. ルールの詳細 |
| 「ダブル」「フリーズ」って何? 「7!」って何の数字? | 3. ショットの種類 |
| なぜその作戦を選ぶのか | 4. 戦略・5. 戦術 |
| 言葉が分からない | 用語集 |
規則の説明は、World Curling の規則書「The Rules of Curling and Rules of Competition」2026年9月1日版にもとづき、4人制を中心に書いています。エンド数・持ち時間・ラストストーンドロー・コンシード・ミックスダブルス・車いすの細かい決まりは、大会や競技種別によって違うことがあります。実際の試合では、その大会の要項と最新の規則が優先します。
1. まずはここだけ(3分でわかるカーリング)
1-1. 何を競うスポーツか
氷の上で石(ストーン)を滑らせ、40mほど先の円(ハウス)の中心に近づけ合います(シート全体の長さは約45.7m)。
エンドの終わりに、相手のどの石よりも中心に近い自分の石が、1つにつき1点になります。これを10回(10エンド)繰り返し、合計点で勝敗を決めます。
1-2. 点の数え方
1エンドが終わった時点で、ハウスの中心(ボタン)に一番近い石を持つチームだけが得点します。
点数は「相手の一番近い石より内側にある、自分の石の数」です。
日本選手権2026 女子決勝、最終エンドの最後の1投。SC軽井沢クラブの石が3つ内側に入り、3点で逆転優勝した場面
投球の前投球のあと
- 両チームが同時に点を取ることはありません
- ハウスに少しも触れていない石は数えません
- 近さが目で分からないときは、専用の器具で測ります
CurlFlux では、ハウスの中の石に近い順の番号が付き、得点になる石には白い丸が付きます。数え方の練習にそのまま使えます。
1-3. 1エンドの流れ
- 1チーム4人。1人2投ずつ、チームで8投(大会によっては、控えの選手を1人登録します)
- 2チームが1投ずつ交互に投げ、16投で1エンド
- 多くのチームは リード → セカンド → サード → スキップ の順に投げます。最後の2投を投げるのが司令塔のスキップです
(投げる順番は試合の前にチームが届け出ます。スキップが3番目に投げるチームもあります)
1-4. ハンマー(後攻)
エンドの最後の1投を「ハンマー」と呼びます。相手の石をすべて見てから最後に投げられるので、後攻は有利です。
- 点を取ったチームは、次のエンドで先に投げます(ハンマーは相手へ移る)
- どちらも点を取らなかった(ブランク)ときは、ハンマーはそのまま
- 第1エンドの先攻・後攻は、あらかじめ決めておくか、試合前の「ラストストーンドロー(LSD)」かコイントスで決めます。LSD では、各チームが別々の選手で2投ずつハウスの中心を狙って投げ、2投の距離の合計が短いチームが、先に投げるか後に投げるかを選べます(ふつうは後攻を選びます)
中継で「後攻」「ハンマーを持っている」と言うのはこのことです。
1-5. なぜ掃く(スイープ)のか
石の前の氷をブラシで掃くと、摩擦が減って石が遠くまで進み、曲がりが少なくなります。
投げた後に距離と曲がりを調整する、主な手段です。
選手が大声で叫んでいるのは、ほとんどがスイープの指示です。代表的なものは次のとおりです(チームによって使う言葉は少しずつ違います)。
| 掛け声 | 意味 |
|---|---|
| 「イエス」「ヤー」「ヤップ」「ゴー」 | 掃いて |
| 「ハード」「ハリー」 | もっと強く掃いて |
| 「クリーン」 | 軽く掃いて(進む先のゴミを払う程度) |
| 「ウォー」 | 掃くのをやめて |
| 「オフ」 | ブラシを氷から離して、絶対に掃かないで |
ハウスにいるスキップは曲がり(線)を見て、石と一緒に走るスイーパーは強さ(どこまで届くか)を感じて、叫び合っています。スイーパーが叫ぶ数字は、石がどこまで届きそうかを表す番号です(3-1 のゾーン)。
1-6. 石はなぜ曲がるのか
投げるときに石へゆっくり回転をかけます(いまの競技では1投で4〜5回転が主流で、トップ選手は5〜7回転)。石は回転の向きに曲がります(カール)。
曲がり方は一定ではなく、速いうちはあまり曲がらず、遅くなるハウスの手前で大きく曲がります。
曲がるので、手前の石(ガード)の後ろへ回り込めます。
1-7. 観戦のコツ
- いまどちらがハンマーかを見る(中継の得点表示に印があります)
- 残りエンドと点差を見る。後攻は2点以上、先攻は相手を1点に抑えるか点を奪う(スチール)のが基本
- 最後の数投は、いまハウスの中で一番近いのはどちらの石かを数えながら見る
1-8. テレビで見ていて気になること
- 何を叫んでいるの?
ほとんどがスイープの指示です(1-5)。「ヤップ」は掃いて、「ウォー」はやめて - スイーパーが叫んでいる数字は?
チームで決めたゾーンの番号で、石がどこまで届きそうかを伝えています。よく使われる「ファービー式」では「7」がボタン付近です(3-1) - スキップがハウスでブラシを置いているのは?
狙いの目印です。投げる人はそのブラシを目がけて投げます。回転の向きは、手や腕で合図します - 4人のうち1人だけ、ハウスにいるのはなぜ?
指示を出す役です。ふつうはスキップで、スキップが投げる番にはサード(バイス)が代わります - 片足だけツルツル滑っているのは?
靴底が左右で違います。投げるときに滑らせる足は滑る素材(スライダー)、反対の足は滑らない素材です - 氷の表面がつぶつぶしているのは?
「ペブル」と呼ばれる、水滴を撒いて凍らせた小さな凹凸です。氷とストーンの摩擦を小さくして、滑りやすくしています - ハウスの青と赤の色に意味はある?
ありません。規則が決めているのは円の大きさだけで、色は決まっていません。得点は中心からの距離だけで決まります - 画面の隅の時計は?
持ち時間です。大きな大会では、作戦を考えられる時間が決まっています(2-8) - タイムアウトはいつ取れるの? 何をしているの?
自分たちの持ち時間が動いている間に、氷の上の選手が「T」の形の合図で要求します。1試合に1回・60秒(エクストラエンドごとにもう1回)。
ベンチからコーチが1人(必要なら通訳も)氷のそばまで来て、その1投の狙いを相談します。コーチが来るまでの移動時間は60秒とは別に足されるので、画面では1分より長く見えます - ホッグ間の時間は何を計っているの?
投げた石が、手前のホッグラインから向こうのホッグラインまで何秒かかったか(ホッグ間タイム)です。氷はその日その時間で速さが変わるので、実測した秒数が「いまの氷でこの強さなら、このくらい走る」という共通の物差しになります。
ストップウォッチはそのための道具で、測った秒数はテイクアウトの強さの指示にも使われます(3-1)。投げる側の区間で測る「スプリットタイム」を使うチームもあります - 「Aプラン」「Bプラン」って?
規則の用語ではなく、チームが作戦を言い表す呼び方です。投げる前に、いちばん良い形(Aプラン)と、思ったより曲がったり滑ったりしたときの次善の形(Bプラン)を決めておきます。
石が走っている間に見込みと違えば、掃くか掃かないかの判断で素早くBプランへ切り替えます。この切り替えの速さが、ミスになりかけた投球を good shot に変える、と解説されることがあります - 線に掛かった石はセーフ? 出るの?
線ごとに違います。向こう側のホッグラインは完全に越えていないと無効、バックラインは完全に越えたら場外(掛かって止まっていればセーフ)、サイドラインは触れたら場外です(2-3) - 石と石の間を器具で測っているのは?
どちらが中心に近いか目で分からないときの計測です。これで点が決まります - 試合の途中で握手して終わったのは?
負けを認めて試合を終える「コンシード」です(2-7) - 「もぐもぐタイム」って?
10エンドの試合の真ん中(第5エンドのあと)にある5分間の休憩(ハーフタイム)に、選手が果物やお菓子を食べる時間のことです。平昌2018で日本代表(ロコ・ソラーレ)の休憩がこう呼ばれて話題になりました - 「そだねー」って?
平昌2018の日本代表が試合中に交わしていた相づちです。2018年のユーキャン新語・流行語大賞で年間大賞に選ばれました

2. ルールの詳細
規則は World Curling(世界カーリング連盟)の規則書「The Rules of Curling」にもとづきます。
2-1. シートとハウス
| 部分 | 大きさ・意味 |
|---|---|
| シート | 氷のコース1本。長さ約45.7m、幅は最大4.75m(既存の施設では長さ44.5m・幅4.42mまで狭くできる) |
| ハウス | 直径3.66m(12フット)の円。内側に8フット(直径2.44m)・4フット(直径1.22m)の円と、中心のボタン(半径15.2cm以上) |
| ティーライン | ハウスの中心を横切る線 |
| センターライン | シートの中央を縦に通る線 |
| ホッグライン | ティーラインから6.4m手前の太い線。両端に1本ずつ |
| バックライン | ハウスの奥の縁に接する線 |
| ハック | 投げるときに足を掛ける台 |
両端のホッグラインの内側どうしは約21.9m、ティーラインの間は約34.7mです。
2-2. ストーン
花崗岩でできていて、重さは規則で17.24〜19.96kg(重くても約20kg)、周囲は最大91.4cm、高さは11.4cm以上。上にハンドルが付き、両チームを色(赤と黄など)で区別します。
2-3. 投げるときの決まりと、石が場外になる線
投げる人は、投げる側のホッグラインに達する前に手を離します。違反した石は取り除きます(大会によっては、ハンドルの電子センサーで判定します)。
投げた石が投球側のティーラインに達する前なら、選手に返して投げ直せます(手を離す位置の決まりとは別のルールです)。
石が場外になる条件は、線ごとに違います。ここは中継を見ていても分かりにくいところです。
| 線 | 条件 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 向こう側のホッグライン | 完全に越えていない石は取り除く(ほかの石に当たった場合を除く) | 越えて初めて有効 |
| バックライン | 完全に越えた石は取り除く(線に掛かって止まっていれば有効) | 完全に出たら場外 |
| サイドライン(隣のシートとの仕切り) | 触れた時点で取り除く | 触れたら場外 |
2-4. フリーガードゾーン(5ロックルール)
エンドの序盤に置いた守りの石(ガード)を、すぐには弾き出させないためのルールです。
- フリーガードゾーン: 向こう側のホッグラインとティーラインの間で、ハウスを除いた部分
- エンドの5投目まで(両チーム合わせて。6投目を投げる前まで)は、フリーガードゾーンにある相手の石を場外に出してはいけません。動かすだけなら構いません
- 違反したときは、投げた石を取り除き、動いた石を相手チームが元の位置に戻します
センターガードの例: 北京2022 女子準決勝の第2エンド、先攻の日本・吉田夕梨花の1投目。ハウスの手前、センターライン上に置いたガード 投球の前投球のあと
1993年に「4投目まで」(4ロック)として始まり、2018年から「5投目まで」に広がりました。攻める余地を増やし、点差が開いても追いつける試合にするためです。
2-5. ノーティックショット(No-Tick Shot、2022年〜)
5投目までは、フリーガードゾーンにあってセンターラインに触れている相手の石を、センターラインから外れた位置や、フリーガードゾーンの外へ動かしてもいけません(横へずらす「ティックショット」の禁止)。
- 違反したときは、動かされた側のチームが「投げた石を取り除き、動いた石を元に戻す」か「そのままにする」かを選びます
- 場外まで出してしまった場合は、フリーガードゾーンの違反(2-4)と同じ扱いです
- 車いすカーリングとミックスダブルスには適用しません
先攻がセンターにガードを置き、後攻がそれを横へずらして逃げる、という序盤の定石を封じるルールです。
2-4 の北京2022の例は、センターラインに触れて置かれたガードです。いまのルールなら、5投目まではこれを横へずらせません(北京2022の時点では、ノーティックはまだありませんでした)。
2-6. スイープの決まり
- 投げたチームは、ティーラインより手前なら、複数の選手で同時に自分の石を掃けます
- 止まっている石は、動き出してからでないと掃けません
- 相手の石を掃けるのは、その石がティーラインに届いてから、ティーラインより奥でだけです
- ティーラインより奥で同時に掃けるのは、各チーム1人ずつ。投げていないチームは、スキップかバイスだけが掃けます
- 掃き方にも決まりがあります。動いている石の前でブラシの頭を持ち上げない、石の前にゴミを落とさない、掃き終わりは石の左右へ抜ける。公式大会では審判が見ていて、違反すると警告、繰り返すと相手チームが「そのままにする」か「投げた石を取り除いて元に戻す」かを選べます
動いている石に触れてしまったとき(「バーンドストーン」とも呼びます)は、どこで・どちらが触れたかで扱いが変わります。
- 向こう側のホッグラインより手前で、自分のチームが触れた → その石はすぐに取り除きます
- ホッグラインを越えてから、自分のチームが触れた → 石が止まったあと、相手チームが「触れた石を取り除いて他を元に戻す」「そのままにする」「触れなければ止まったはずの位置に置く」から選びます
- 相手のチームが触れた → 触れられた側が、触れなければ止まったはずの位置に置きます(ホッグラインより手前で投げた石に触れた場合は、投げ直し)
2-7. 試合の終わり方
- 規定のエンド数(4人制は10エンド)を終えた時点の合計点で決着します
- 同点ならエクストラエンド(延長)。点を取った方が勝ちです
- コンシード(投了): 逆転が難しいと判断したチームは、規定のエンドを待たずに負けを認めて試合を終えられます。握手が合図です
- 世界大会の10エンドの試合では、予選は6エンド、決勝トーナメントは8エンドを終えるまでコンシードできません
- 北京2022 女子決勝、第9エンドを終えて日本がコンシード この局面を開く
2-8. 持ち時間とタイムアウト
大きな大会では、各チームに作戦を考える時間(シンキングタイム)の持ち時間があり、使い切ると負けです。
World Curling の競技規則では、次のとおりです。
| 形式 | シンキングタイム |
|---|---|
| 4人制・10エンド | 1チーム38分 |
| 4人制・8エンド | 1チーム30分 |
| 車いす | 1チーム38分 |
| 車いすミックスダブルス | 1チーム26分 |
| ミックスダブルス | 1チーム22分 |
- エクストラエンドでは時計をリセットし、追加の時間が与えられます(10エンド・8エンドは1チーム4分30秒)
- タイムアウトは1試合に1回・60秒(エクストラエンドごとに、もう1回)
- 試合の真ん中のエンドが終わると休憩(ハーフタイム)。ふつうは5分(車いすミックスダブルスは7分)で、長さは大会ごとに決まります
4人制の10エンドなら、試合は2時間半〜3時間ほどのことが多いですが、展開によって大きく変わります。
2-9. ミックスダブルス
男女1人ずつの2人制。4人制との違い:
- 8エンド。シンキングタイムは1チーム22分
- 1エンドに各チーム5投。エンドの開始前に、各チーム1つずつ置き石を置いてから始めます。置き場所は2か所で、片方はセンターライン上のハウスの手前(ガード。ハウスの手前の縁から1.37m・1.98m・2.59m・3.20m の4つの目印のうち1つを、大会ごとに決めます)、もう片方はハウスの中(石の後端を4フット円の後端にそろえる位置)です
- 1投目を投げた選手が最後の5投目も投げ、もう1人が2〜4投目を投げます(1投目を投げる選手はエンドごとに替えられます)
- 4投目を投げる前まで(3投目まで)は、置き石を含め、どの石も場外に出してはいけません(ミックスダブルス版のフリーガードゾーン)
- パワープレー: 各チーム1試合に1回、置き石の位置を決める番のときに、ハウスの中の置き石とガードを、センターではなく同じ側に寄せて置けます。エクストラエンドでは使えません
2-10. 車いすカーリング
止まった車いすから投げます。石は手か、デリバリースティック(長い棒)で押し出します。スイープはありません。試合は8エンドです。
World Curling の大会では、氷上の4人が投球し、チームは常に男女両方を含みます。
3. ショットの種類
石の動かし方には名前があります。World Curling の公式記録も、同じ分類で1投ずつ記録しています。
成功率は、公式記録にある4人制の約48万投を数えたものです。World Curling は1投ごとに0〜4点で採点していて、その平均を4点=100%で表しました(ショットの分類は公式記録のもの。集計はこちらで行い、note 連載の第8回と同じ)。
| ショット | 何をするか | 成功率 |
|---|---|---|
| ドロー | ハウスの中に止める | 79% |
| ガード | ハウスの手前に置いて、後ろの石を守る | 86% |
| フロント | ハウスのすぐ手前に置く | 91% |
| レイズ | 手前の石に当てて、奥へ押し込む | 69% |
| ウィック | ほかの石の端をかすめて、向きを変える | 69% |
| フリーズ | 相手の石にぴったり付けて止める(弾き出されにくい) | 66% |
| テイクアウト | 相手の石を弾き出す | 82% |
| ヒットアンドロール | 弾き出したあと、自分の石を転がして良い位置に残す | 77% |
| クリアリング | ガードなどを勢いよく片付ける(ピール) | 90% |
| ダブルテイクアウト | 1投で2つの石を弾き出す | 71% |
| プロモーション | 手前の石を押して、奥の石を弾き出す(ランバック) | 63% |
置くショット(フロント・ガード)の成功率は高く、石を経由するショット(プロモーション・フリーズ・レイズ・ダブル)は低くなっています。 別の石を正確に経由させる必要があるぶん、難しいと考えられます。
実戦の例(「投球の前」と「投球のあと」を開いて見比べられます)
- ダブルテイクアウト: 北京2022 女子準決勝、藤澤五月のダブルで4点 投球の前投球のあと
- ダブルテイクアウト(決めても点を取られる例): 平昌2018 女子準決勝、藤澤のダブル。それでも韓国が2点 投球の前投球のあと
- ヒットアンドロール: ミラノ2026 日本×アメリカ、ピーターソンのヒットアンドロールでアメリカが1点スチール 投球の前投球のあと
- ドロー: 2025 日本代表決定戦の第3戦、吉村紗也香の最終投。6-5で五輪代表が決まる 投球の前投球のあと
- ドロー(スチール): 平昌2018 女子3位決定戦の第9エンド、藤澤のドローで1点スチール 投球の前投球のあと
- プロモーション: ミラノ2026 デンマーク×日本、デュポンのプロモーションで3点 投球の前投球のあと
- レイズ: 平昌2018 女子3位決定戦の第7エンド、鈴木夕湖 投球の前投球のあと
- ウィック: 平昌2018 女子3位決定戦の第8エンド、吉田知那美 投球の前投球のあと
- フリーズ: 北京2022 女子決勝の第6エンド、藤澤五月。イギリスの石にぴったり付けて、日本がNo.1を取り返す 投球の前投球のあと(公式記録の分類はドロー)
3-1. ウェイト(強さ)— ドローは「ゾーン」、テイクアウトは「秒数」
投げる強さの伝え方は、ショットによって違います。どちらも規則ではなく、チームの間で使われている呼び方です。
ドロー(止めるショット)は、止まる場所を1〜10の「ゾーン」で呼ぶことが多いです。 多くのチームが使う「ファービー(Ferbey)式」と呼ばれる呼び方です。
| ゾーン | 止まる場所 |
|---|---|
| 1〜3 | ホッグラインからハウスの手前まで(ガードの深さ。1がホッグライン寄り) |
| 4 | ハウスに入ったところ(12フットの前側) |
| 5 | 8フットの前側 |
| 6 | 4フットの前側 |
| 7 | ボタン(中心) |
| 8 | 4フットの後ろ側 |
| 9 | 8フットの後ろ側 |
| 10 | 12フットの後ろ側(バックラインの手前) |
投げた直後から、スイーパーが「5!」「7!」と届きそうな場所を叫び、スキップと掃くかどうかを決めます。ゾーンの分け方はチームによって違うこともあります。
ミックスダブルスの置き石に使う目印(ハウスの手前、センターライン上の4つの点。2-9)を借りて、「3ポチ」のように呼ぶチームもあります。
テイクアウト(当てるショット)は、強さを「秒数」で伝えることが多いです。 代表的なのは、石が両端のホッグラインの間を通る時間(ホッグ間タイム)で、短いほど強い投球です。投げる側で測る「スプリットタイム」を使うチームもあり、どの数字を使うかはチームや地域によって違います。
CurlFlux での目安(ホッグ間タイム。CurlFlux の強さのプリセットを、トップの大会の氷で計算した値)
| 強さの名前 | ホッグ間タイム | 使いどころ |
|---|---|---|
| ボード | 12〜13秒 | ハウスの奥の板(ボード)まで届く、いちばん弱い当て方 |
| ノーマル | 9〜10秒 | ふつうのテイクアウト |
| ピール | 8秒前後 | ガードなどを勢いよく片付ける |
ドローは止める位置を狙うので、氷の速さの影響を大きく受けます。映像で測ると、ハウスの中心に止まるドローのホッグ間タイムは、五輪で13.5〜13.7秒、国内の大会で14秒前後でした。
3-2. 回転の向き
時計回りと反時計回りのどちらで投げるかは、どちらへ曲げたいかで決めます。
成功率の差はほぼありません(反時計回り80.6%、時計回り80.2%)。
→ note 第7回「時計回りと反時計回り、成功率に差はあるか。47万投の答え」
4. 戦略(試合をどう組み立てるか)
ここからは「なぜその作戦を選ぶのか」です。
数字は World Curling の公式記録から4人制の男女22,384試合を数えたもので、くわしくは note の連載にまとめています。
4-1. 後攻は2点、先攻は1点に抑える
- 後攻(ハンマー側)の目標は2点以上。1点で終えるとハンマーを相手に渡すので、もったいない
- 先攻の目標は、相手を1点に抑える(フォース)か、点を奪う(スチール)
規則ではなく、多くの局面で目安になる考え方です。点差・残りエンド・ハンマーの有無で変わります。
4-2. ブランクエンド
後攻が2点を取れそうにないとき、あえてハウスを空にして0点で終え、ハンマーを次のエンドに持ち越します。
北京2022 女子決勝の第3エンド。日本が3つ並べたところを、イギリスのダブルテイクアウトでブランクに 投球の前投球のあと
数字でも、同点の後攻は1点取るよりブランクのほうが勝率が高い(残り7エンドで61%対57%)。ただし残り2エンドだけは差が消えます(65%対67%)。
→ note 第2回「1点よりブランク」は本当か
4-3. 同点で最終エンドの後攻
最終エンドを同点・後攻で迎えたチームの勝率は72.9%。世界選手権と五輪だけなら78.3%です。
中継でよく聞く「8割」は、トップの大会に限れば近い数字です。
→ note 第1回「同点で最終エンド、後攻の勝率は何%か」
4-4. 1点リードの先攻と、1点ビハインドの後攻
「1点負けていても後攻なら悪くない」と言われますが、数字ではどの局面でも1点リードの先攻が有利でした。
1点ビハインドの後攻の勝率は、いちばん低い残り2エンドで33.5%です。
→ note 第3回「1点ビハインドの後攻と、1点リードの先攻。どちらが有利か」
4-5. スチールで作ったリードは強い
同じ1点リードでも、スチールで作ったリードのほうが、後攻で取ったリードより勝率が7ポイントほど高い、という差が記録に出ています(残り6エンド以上で65%対58%)。
チームの強さをそろえても差は残りますが、これは観測された差で、スチールそのものが勝率を押し上げると確かめたわけではありません。
平昌2018 女子3位決定戦の第9エンド、藤澤のドローで1点スチールしてリード 投球の前投球のあと。日本は第10エンドもスチールして銅メダル
→ note 第4回「同じ1対0でも中身が違う。スチールで作ったリードの価値」
逆に、2点以上スチールされたチームは、ハンマーを持ったまま入る次のエンドも崩れやすい、という差も出ています(同じ局面の平均より純得点が0.12点低く、またスチールされる確率が3.8ポイント高い)。1点のスチールの直後には、この差は見えません。
→ note 第5回「大量スチールされた次のエンドに、何が起きるか」
4-6. ルールが変わると作戦も変わる
5ロック(2018年)とノーティック(2022年)で、ブランクは12.2%から9.6%に減りました。序盤にガードを片付けにくくなったためです。
一方、世界選手権と五輪では、ノーティック以降に第1エンドをブランクにする割合が28%から36%に増えています。
→ note 第6回「5ロックとノーティックで、試合はどう変わったか」
5. 戦術(局面の読み方)
5-1. センターガードとコーナーガード
- 先攻はハウスの真ん前(センター)にガードを置き、後攻が点を取りにくくする
- 後攻はハウスの左右(コーナー)にガードを置き、その後ろへ回り込んで2点以上を狙う
センターガード: 北京2022 女子準決勝の第2エンド、先攻の日本 投球の前投球のあと
▶ コーナーガード: 同じ試合の第3エンド、後攻になった日本がハウスの横の手前に置いたガード 投球の前投球のあと
5-2. 石を溜めるか、片付けるか
ハウスの周りに石が多いほど、何が起きるか読みにくくなります。
リードしているチームは石を弾き出して場を片付け、追うチームは石を溜めて大量点を狙います。
5-3. 最後の2投はなぜ難しいか
スキップ(最後の2投)の成功率は77%で、リードの86%より低い。下手だからではなく、難しい局面が回ってくるからです。
ドローはリードが84%、スキップが75%。逆にテイクアウトはスキップが84%でいちばん高い。
→ note 第8回
5-4. あなたならどう投げる?(実戦の局面)
開いたら、画面上部の「作戦盤」に切り替えると、その局面の次の1投(下に書いた投球)を自分で投げられます。「提案」を開くと、その局面の勝率と候補のショットが出ます。
盤面に出ている「試す」は、いま見えている盤面を作った直前の1投を投げ直すボタンなので、1つ前の投球に戻ります。ここでは「作戦盤」を使ってください。
- 平昌2018 女子3位決定戦、最後の1投。イギリスのミュアヘッドはどこを狙う? この局面を開く
- 2025 日本代表決定戦の第3戦、5-5の最終投。ハウスはSC軽井沢の石が1〜3番 この局面を開く
- ミラノ2026 日本×アメリカ、3-3の第6エンド。アメリカの13投目 この局面を開く
- 日本選手権2026 女子決勝の第7エンド。No.1は北海道銀行、SC軽井沢の11投目 この局面を開く
- ミラノ2026 日本×スウェーデンの第3エンド。日本がNo.1とNo.2、スウェーデンの15投目 この局面を開く
5-5. 練習問題
開くと「作戦盤」で始まるので、そのまま投げて確かめられます。
- ① 黄の最後の1投の前です。いま赤は何点取っている? この課題を開く
- ② 赤の5投目。フリーガードゾーンのルールで、場外に出してはいけない石はどれ? この課題を開く
- ③ 黄の2投目。センターガードの後ろ、ボタンへ回り込むドローを投げてみよう この課題を開く
答え: ① 赤2点。黄のいちばん近い石より内側に、赤が2つあります(3つめの赤はそれより外)。② ハウスの手前にある黄の石。5投目まではフリーガードゾーンの相手の石を場外に出せません。ハウスの中の黄と、自分の赤は出してかまいません。
用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| アウトターン/インターン | 回転の向き。投げる人から見て、ハンドルを外側/内側へ回す投げ方。利き手で逆になる(右利きはアウトターン=反時計回り=石は左へ、インターン=時計回り=石は右へ。左利きはその逆)。このアプリは利き手に左右されない「左曲がり/右曲がり」で表示します |
| ウェイト | 投げる強さ。ドローはゾーン(1〜10)、テイクアウトは秒数で呼ぶことが多い |
| ウォー | 掃くのをやめて、の掛け声 |
| エクストラエンド | 同点のときの延長エンド |
| エンド | 16投(ミックスダブルスは各5投)で1区切り。4人制は10エンド |
| ガード | ハウスの手前に置いて、後ろの石を守る石 |
| カール | 石が回転の向きに曲がること |
| クリアリング/ピール | ガードなどを強く弾いて片付ける |
| コンシード | 投了。負けを認めて試合を終える |
| コーナーガード | ハウスの左右の手前に置くガード |
| シート | 氷のコース1本 |
| シューター | いま投げた石。ハウスに元からある石と区別するときの呼び方 |
| ショットストーン | ハウスの中心に一番近い石。ナンバーワン(No.1)と同じ |
| スイープ | ブラシで氷を掃くこと。石を伸ばし、曲がりを抑える |
| スキップ | チームの司令塔。ふつう最後の2投を投げ、ハウスで指示を出す |
| スチール | 先攻が点を取ること |
| スライダー | 投げるときに滑らせる足の、滑る靴底 |
| センターガード | ハウスの真ん前に置くガード |
| センターライン | シートの中央を縦に通る線 |
| ゾーン | ドローで止まる場所を1〜10で呼ぶ番号(ファービー式では7がボタン) |
| ダブルテイクアウト | 1投で2つの石を弾き出す |
| ティーライン | ハウスの中心を横切る線 |
| テイクアウト | 相手の石を弾き出す |
| ドロー | ハウスの中に止める |
| ナンバーワン(No.1) | ハウスの中心に一番近い石 |
| ノーティック | センターライン上のガードを序盤に横へずらすことを禁じるルール(2022年〜) |
| ハウス | 得点を争う円 |
| ハーフタイム | 試合の真ん中にある5分間の休憩。「もぐもぐタイム」とも |
| バーンドストーン | 動いている最中に体やブラシが触れた石 |
| ハック | 投げるときに足を掛ける台 |
| ハンマー | エンドの最後の1投。それを持つ後攻のこと |
| ヒットアンドロール | 弾き出したあと、自分の石を転がして残す |
| ブルーム | スキップがハウスに置く狙いの目印(ブラシ) |
| フォース | 先攻が、後攻に1点だけ取らせること |
| ブランクエンド | どちらも点を取らないエンド。後攻がハンマーを持ち越す |
| フリーガードゾーン | 序盤は相手の石を場外に出せない範囲 |
| フリーズ | 相手の石にぴったり付けて止める |
| プロモーション | 手前の石を押して奥の石を弾き出す(ランバック) |
| ペブル | 氷の表面に撒いて凍らせた小さな凹凸。ストーンと氷の摩擦を小さくする |
| ボタン | ハウスの中心の円 |
| ホッグライン | 投げる石を離す限界の線。向こう側のホッグラインを越えない石は取り除く |
| ホッグ間タイム | 石が両端のホッグラインの間を通る時間。強さの目安 |
| ヤップ | 掃いて、の掛け声 |
| ラストストーンドロー(LSD) | 試合前に各チームが2投ずつハウスの中心を狙って投げ、距離の合計が短いチームが第1エンドの先攻・後攻を選ぶ |
| リード/セカンド/サード | 1〜2投目/3〜4投目/5〜6投目を投げる選手。サードはバイスとも |
| レイズ | 手前の石に当てて奥へ押し込む |
| 5ロック | 5投目まで相手のガードを場外に出せないルール(2018年〜) |
よくある質問
なぜ氷を掃くのですか?
摩擦を減らして石を遠くまで進め、曲がりを抑えるためです。投げたあとに距離と向きを調整する、主な手段です
選手は何を叫んでいるのですか?
ほとんどがスイープの指示です。「ヤップ」は掃いて、「ウォー」はやめて。数字は石がどこまで届きそうか(ゾーン)です
なぜ最後に投げるほうが有利なのですか?
相手の石をすべて見てから、最後に結果を決められるからです
なぜわざと0点で終えるのですか?
後攻がハンマー(最後の1投)を次のエンドに持ち越すためです。1点で終えるとハンマーは相手へ移ります
「スチール」とは何ですか?
先攻が点を取ることです。後攻にとっては痛い失点です
石の重さはどれくらいですか?
17.24〜19.96kg、約20kgです
1チーム何人ですか?
4人(リード・セカンド・サード・スキップ)です。大会によっては控えの選手を1人登録します。ミックスダブルスは男女1人ずつの2人です
1試合はどれくらいかかりますか?
4人制の10エンドで2時間半〜3時間ほどのことが多いですが、展開によって大きく変わります
試合の途中で終わることがあるのはなぜですか?
逆転が難しいと判断したチームがコンシード(投了)するためです
「もぐもぐタイム」とは何ですか?
試合の真ん中にある5分間の休憩(ハーフタイム)で、選手が軽食をとる時間のことです
5ロックルールとは何ですか?
各エンドの5投目までは、ハウス手前の相手の石を場外に出してはいけないルールです
自分でも投げてみられますか?
CurlFlux ならブラウザだけで、実際のシートと同じ寸法の物理で投げられます。登録はいりません
出典
- 規則: World Curling「The Rules of Curling and Rules of Competition」2026年9月1日版(規則 R1〜R19、競技規則 C5〜C8)
- 成功率・勝率の数字: World Curling / CURLIT の公開記録(Results Book・Shot by Shot)をこちらで集計したもの。4人制の22,384試合・約48万投で、集計の手順は note の連載に書いています
- ドローのゾーン(ファービー式): Silicon Valley Curling Club の会員ハンドブック(Figure 2)
- 実戦の局面: CurlFlux のライブラリ。試合ごとの出典は実戦記録の一覧にあります
- 「もぐもぐタイム」「そだねー」: 平昌2018の報道と、ユーキャン新語・流行語大賞の発表(規則ではなく、日本で広まった呼び名です)
読んだ局面は、CurlFlux でそのまま投げ直せます。登録もインストールもいりません。
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